DXの推進やIoT技術の発展により、AIのビジネス活用が進んでいます。IDCの世界AI市場に関する調査結果によると、2021年の世界のAI関連の市場規模は約35兆556億円。2024年には約59兆3323億円超が見込まれています。
このような魅力的なAI市場なだけあって参入したいエンジニアも市場拡大に伴って増えているのが現状。では、AIエンジニアには簡単になれるでしょうか。
残念ながら、AIエンジニアになるのは難しいハードルが幾つもあります。
それでも市場の伸びも大きく、AIエンジニアは魅力的なお仕事です。
そこで本記事では、フロントエンドやバックエンドの現役エンジニアがAIエンジニアに転身するのが難しい理由、必要なスキル、そしてそのスキルを身につけAIエンジニアへ転身するための学習方法について体系的に解説します。
AIエンジニアへの転身が難しい理由と必要なスキル
AIエンジニアに転身するのがなぜ難しいのでしょうか。
その答えは、AIが動く仕組みと大きな関係があります。AIは機械学習と強化学習、ディープラーニングが独特の技術です。
機械学習と強化学習、ディープラーニングを使いこなすためには、数学的な素養や統計のスキル、データベースへの造詣が深いこと、理論的思考が必要となります。
AI技術者となるために必要な知識やスキルについて細かく見ていきましょう。
数学的な素養を求められる
AI技術者となるためには、数学的な素養が欠かせません。ここで必要になる数学の素養は、計算が正確にできるということではないのがポイント。
AIを動かす技術には、機械学習が挙げられます。機械学習とは簡単に言うと、多くのデータから法則性やパターンを見つけ出して次の一手を打つことです。
多くのデータの中から法則性・規則性を見つけて分類するのは、まさに数学の考え方の根本的な部分です。確率・統計・微分積分を中心に、大学で学習する高度なレベルの数学的知識が仕事で求められます。
数学力や数学的にものを見る力が、AIエンジニアとなるためには必要です。
統計解析の知識・スキルが必要である
AIエンジニアの仕事は大きく次の3種類に分けられます。機械学習の実装を行う「機械学習エンジニア」、主にデータを統計分析する「データサイエンティスト」、AI技術を用いながらプロジェクトの目的を達成するためにデータを読み解く「データアナリスト」です。
この3業種がチームとなって動くことも多く、AIの要件定義から開発・実装・分析・検証まで一貫して行います。
このうち、データサイエンティストとデータアナリストには統計分析の仕事が必ず発生します。
データの統計分析には、当然ながら統計のスキルが必要です。統計は単に数学ができるだけではいけません。
分析目的に合わせて統計するデータを正しく集める力、適切な形式で集計し可視化する力、結果を正しく読み取る力が必要です。
データベースに関するスキルが必要である
AIは大量のデータを取り扱うため、データベースに関するスキルが必要になります。
データベースを扱うために必須のスキルがSQL。SQLはプログラミング言語ではなく、データベース言語と呼ばれます。
データベース言語であるSQLをPythonなどのプログラミング言語と組み合わせ、AIを動かします。
AIを稼働させるプログラミング言語に加え、データベースを動かすためのSQLを理解していることがAIエンジニアには必要です。
論理的思考は必須である
AI設計のために必要なのは、物事をわかりやすく表現するスキルよりも論理的思考です。
AIを相手にするため、ロジックを正しくする必要があります。
例えば、フロントエンドエンジニアは多少解りにくいプログラミングをしても、挙動やUI(ユーザーインターフェイス)上は問題無かったりすることもあります。
しかしAIエンジニアはロジックを間違えるとAIが間違った結論を出すため、フロントエンドエンジニア以上に論理的に考えなければならない場面が多く出てきます。
技術的トレンドが早く、追いかけるのが大変である
AIは新しい分野です。めまぐるしく技術も進歩しているので、日々勉強を続けなければついていけません。
数年前には言葉もなかったDXや、急速に発展しているIoTの技術にもAIは利用されています。有名なところだと、Google HomeやUberのシステムにもAIが導入されていまし、生活の至るところでAI導入が進んでいます。
最新の技術には欠かせないAI。当初の「データベースから予測する仕事」だけでなく、今後も新しい潮流が生まれていくため、キャッチアップするために常に学ぶ必要があります。
トレンドを追いかけるのが大変なのはAIエンジニアに限った話ではありませんが、AI分野もトレンドが早い最先端分野となります。
逆に言うと、新技術に目を輝かせられる人はAIエンジニアにも向いていると言えるでしょう。
AIエンジニアへ転身するための学習方法
AIエンジニアになるためには、数学的な素養、統計解析、データベースへの理解、論理的な思考、そして技術トレンドにアンテナを高くしなければならないことを解説してきましたが、では、どのように学習すれば良いのでしょうか。
大別すると、自分一人の力で独学で学ぶ方法と、スクールに通う方法がありますが、以下で詳しく紹介します。
書籍やブログなどで学習し、プロトタイプを作ってみる
独学でAI技術の学習を進めるには、書籍を読んだりブログで学んだりするのが昔からの王道です。
書店にはPythonなどのプログラミング言語やSQLの本が数多く置かれています。プログラミングの基礎となる数学の本も何冊もあります。インターネットでググれば、AI技術に使える言語や論理的思考を教えてくれるサイトやブログも数多く表示されます。
また、Webサービスでも、Progateやドットインストールなどの学習サイトでもAIプログラミングは学習できますし、MENTAのようなメンターを探せるサイトもあります。
これらのサービスを活用しながら学習し、プロトタイプを開発してみるのも一つの方法ですね。
しかし、書籍やWebサイトを活用した独学というのはメンタルが強くないと難しく挫折しやすいのも難点ですね。解らないところでつまずき、遠回りになることもあります。
独学でAIエンジニアになるための学習をするのは、基礎ができていて意思の強い人に向いています。
疑問を解決しながら学習するためには、人と一緒に誰かに教えてもらうのが近道です。
人工知能が学べる学校や大学に入学する
人と一緒にAI技術に関して学ぶのは、学校が適しています。専門学校や大学で学ぶと、仲間ができ挫折しにくくなります。
そこそこの学費を払って入学しますので簡単にはやめられないという気持ちも芽生えますしね。
学校で教鞭を取っている人は、研究者や指導者として学生たちに教えています。人に教える専門家に教えてもらうことで、わかりやすく基礎的なスキルを学んでいけます。
プログラミングに関してだけでなく、数学や思考の仕方など、AIエンジニアとして身に付けるべき素養を学べるのも大きなポイント。
基礎をしっかり固めるには、学校は適している場所です。しかし、学校や大学のデメリットは、教えてくれる人が必ずしも現場の第一線でリードエンジニアとして活躍している人ではないことも多々あります。
最新の技術トレンドについていく必要があるAIエンジニアとして、即戦力となれるか疑問が残るのも事実です。
AIに強いプログラミングスクールに通学する
AIで使う技術を人に教えてもらいつつ、現場にもっとも近い話を聞けるのがプログラミングスクール。
AIエンジニアになるために必要不可欠な知識を教えてもらいつつ、最新の技術トレンドをわかりやすく学ぶことができます。
プログラミングスクールに通っている人は、目標が一緒の人ばかりなのも良いところです。通っている人同士でお互いにつまずいたところを話し合い、知識やスキルの向上につなげられます。他の人と話せば新たな発見があり、習得速度も早まっていきます。
最近ではAIや機械学習のコースを持つプログラミングスクールも増えてきています。実際に他の受講者と交流し自分の学びに活かすことで自分にとってプラスになりますし、就転職支援があるのはプログラミングスクールに通う最大のメリットですね!
AIに強いプログラミングスクールに通学するのが、AIに関する知識を身につける最短ルートです。
AIスクールの選び方とAI学習におすすめのスクールについては別記事になりますが、下記記事もぜひチェックしてみてくださいね!

学習後のAIエンジニアへのなり方
AIに関する知識・スキルを学んだあとは、実際にAIエンジニアに転身としてキャリアを積むことになります。
では、AIエンジニアへ転身する方法には、どのような方法があるのでしょうか。
一般的なAIエンジニアへのなり方として以下に3つ紹介します。
複業・副業サイトで案件や求人を探し、経験を積む
働き方改革やリモートワークの普及に伴い、複業や副業に関する募集サイトが急増しています。
AIエンジニアはどこも人手不足ですので正社員募集では見つからず、副業や複業で良いのでと募集する企業も増えています。
複業・副業の案件では実務経験者のある即戦力が求められている傾向にありますが、中には実務がなくてもスキルがあれば採用してもらえるような案件も数は少ないですがあります。
プログラミングスクールなどでは、AIエンジニアの基礎を学習後に仕事獲得の方法を設けているスクールもありますので、そのようなコースに最初から入学してしまい、卒業後は求人を探し、副業として経験を積むのもAIエンジニアへのなり方の一つですね。

転職サイトや転職エージェントに登録し、転職活動を始める
転職サイトにもAIエンジニアの求人は溢れています。こちらも実務未経験でも可能な求人もありますので、転職サイトを活用するのも選択肢の一つです。
また、転職サイトではなく、実際に専任のカウンセラーやコンサルタントに付いてもらえる転職エージェントへ登録し、やりたいことや今後のキャリアを相談しながら転職先企業を紹介してもらう方法もあります。
転職エージェントを活用するメリットはなんと言っても自分の代わりに転職先を探してくれピッタリ合う会社を提案してくれ、年収や入社日の調整をしてくれるところですね。
デメリットは転職エージェントは有象無象に溢れていますので、エージェントが合わない確率も十分に考えられます。そのため最低限エンジニア専門のエージェントを活用し、必ず複数社に登録し比較してみるようにしてください。エンジニア専門に絞ったところで転職エージェントは山のようにありますので心配ご無用です。
プログラミングスクールから就転職支援をしてもらう
AIに強いプログラミングスクールでは、卒業生がAIベンチャーやAI開発に強い会社などに就職や転職を果たしている先輩が多数います。
また、プログラミングスクールの講師やメンター自身がAIエンジニアとして第一線で活躍しているケースが多いため、そのツテで就転職に繋げられることもあります。
現場で働く卒業生や企業から情報を常に最新のAIエンジニアのニーズを仕入れているため、プログラミングスクールは最新のトレンドに強く、業界の動向もよく知っています。
就転職率や卒業後に入社した企業やポジションはスクールの実績になりますので、当然といえば当然ですね。
また、プログラミングスクールの就転職支援は履歴書や職務経歴書・ポートフォリオ作りに関するアドバイスだったり模擬面接だったりもしていますので、スキル習得と就転職を目的にスクールに入学するのはかなりベストな方法ですね。
まとめ
今回は、AIエンジニア転身が難しい理由・必要なスキル・学習方法・なり方について体系的に解説させていただきました。
独学で学ぶのは挫折もしやすく意思が強くないと難しいです。学習が進められたとしても、AIエンジニアとして現場の第一線で活躍するには困難が多く待ち受けています。
仲間やメンターという周囲の力を借りながら、AIに関する知識やスキルを学び、就転職や案件獲得に繋げましょう。
最適な学習環境となり方でAIエンジニア転身を果たせるよう本記事を参考にしてみてください。